この土地がピノ・ネロに最適だと証明されても、この道を選択した者は誰もいなかった。
このことからもこの選択の難しさがわかる。
加えて、歴史ある土地は、時として保守的だ。
しかし、彼らはオルトレポー・パヴェーゼで最初の「シャンパーニュ製法のブラン・デ・ノワール」に特化した生産者となった。バッラービオが「前衛的」といわれる所以だ。

情熱と、この地のポテンシャルを証明したいという飽くなき欲求

背景にどのような想いがあったのだろうか？
フィリッポは別のインタビューで次のように語っている。
「オルトレポー・パヴェーゼで成功を収めたワイナリーは（他の品種のワインも造っていたが）何よりもシャンパーニュ製法のブラン・デ・ノワールで、人々の記憶に残っている。
(中略）だから、私たちバッラービオは歴史から学び、この土地で行うべき最善の事柄に取り組んでいる」

その息子マッティアは言う。
「情熱と、この地のポテンシャルを証明したいという飽くなき欲求が、卓越したスプマンテを造る原動力になっている」と。

一部の熱狂的なファンに響き、深く、長く、愛されるワイン

彼らは、このピノ・ネロのプロジェクトを「ノワール・コレクション」と名づけ、「エクストラ・ブリュット」、「ロゼ」「ゼロ・ドサージュ」「カーヴェ・プリヴェ」を「ファルファッラ」ブランドとした。
この「ファルファッラ」とは「蝶」のことで、隣接する畑の形が蝶が羽ばたく姿に似ていることに由来する。

では、彼らの造るワインの特徴は何だろうか？
それは、エレガントさ、美しさ、洗練されたピュアさ、儚さも感じるほどの繊細さ、きれいな酸、そしてバランスの良さだ。
誰にでも好まれるというよりは、一部の熱狂的なファンに響き、深く、長く、愛されるワインだろう。
味わうほどに伝わるその緻密さが印象的だ。きめ細やかな配慮、完璧主義、といった造り手の特徴を、ワインが饒舌に、私たちの感覚に語りかけてくる。

これはまだ始まりであり、卓越したワインを造るための挑戦はずっと続く

彼らのストイックさは、2012年から作成している「CARTA ETICA (倫理憲章)」からも見てとれる。これは、ワイン醸造について厳密なルールを記述したもので、彼らはこれを遵守している。

そこには、1905年にアンジェロ・バッラービオが創業した時から行われてきた環境への配慮も含まれる。

彼らの「ファルファッラ」はミラノなど北イタリアのレストランを中心に広がっていき、ジェノヴァ、ヴィチェンツァ、パドヴァ、ピアチェンツァ、マントバ、クレモナ、などでその名を知られるようになる。
そして、挑戦から時を経た2020年、確かな手応えが、素晴らしい賞と共にもたらされた。
満を持して一般にリリースされた彼らの 「カーヴェ・プリヴェ ’11」が、イタリアで最高のスプマンテに贈られる、ガンベロ・ロッソの「BOLLICINA DELL’ANNO 2021」を受賞したのだ。

彼らは言う。「これからも、とにかく質を追求していきたい。
これはまだ始まりであり、卓越したワインを造るための挑戦はずっと続く。メトド・クラッシコ(シャンパーニュ製法）といえば、ネヴェッリ家だ、と言われるように。私たちは、私たちが国際的なレベルにおいて独自性で勝負できるものに、対立を恐れずに投資をするべきだ。」